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『本物の英語力』(鳥飼玖美子)は真っ当な英語勉強法を示してくれる良書である

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『本物の英語力』という本を読みました。

本物の英語力 (講談社現代新書)

本物の英語力 (講談社現代新書)

 

 

著者は元同時通訳者で、NHKの語学番組での出演でも有名な鳥飼玖美子先生です。

 

先日アマゾンの英語関連本のランキングで見つけたので即購入。一日で読み切りましたが、率直に言って良書でした。

今回はこの『本物の英語力』という本を紹介していきたいと思います。

 

具体的な英語学習法がわかる

ぼくがいままで読んだことのある鳥飼先生の本は次の2冊です。

危うし!小学校英語 (文春新書)

危うし!小学校英語 (文春新書)

国際共通語としての英語 (講談社現代新書)

国際共通語としての英語 (講談社現代新書)

 

2冊とも英語についての本ですが、どちらも「英語を題材にしてはいるが、扱っているテーマはもっと広い"コミュニケーション全般"についてのことである」という特徴があります。

 

たとえば2冊目に挙げた『国際共通語としての英語』では、

前書では、グローバル時代の多文化多言語社会において異文化コミュニケーションを目的とした英語が必要であることを説き、ネイティブ・スピーカーを目指すのではなく「国際共通語」として「分かり合える英語」を追求することを提案しました。

(204ページより)

とあるように、英語をどのように使っていけばいいのか、また今の時代に英語はどうあるべきか、ということが書かれていました。

 

これに対して今回の『本物の英語力』では、"具体的にどのように英語を学習していけばいいのか”というのがテーマになっており、筆者が考える最適な英語勉強法について詳細に書かれています。

 

前までの本は、英語が使えるというのは前提として存在していて、どちらかというとそれを使ってどのようにコミュニケーションをとっていけばいいのかというのが話題の中心になっていました。

なので、おそらくそれを読んだ人から、

「コミュニケーションのあり方はわかったから、具体的に英語をどうやって勉強したらいいのか教えてくれ」

という反響があり、この本を書くに至ったのではないかと勝手に想像しています。

 

このような背景があったのではないかと推測できるのにはもうひとつ理由があります。

この本のところどころに、

 

英語くらい自分で頑張って勝手にできるようになってよ。そんなこと早く克服して、もっと深い、コミュニケーションについてみんな考えようよ

 

というメッセージが読み取れるんです。このようなスタンスで書かれた本ってこの手の本では珍しいですよね。

いわゆる英語のハウツー本は数多ある上、どのように学ぶかは学習者が個々に考えて選択すべきだと考えてきた私が、あえて学習方法に踏み込んだのには・・・(204ページ)

 

さて、英語学習法の本といえば世の中には腐るほどあります。

実際、この本もそれらの本と内容的にかぶる点も多いのですが、2点、特徴的だなと感じたことがあります。

 

まず、筆者が英語をグイグイと礼賛する英語原理主義者"ではない"という点。

悪いことに、英語が重要だとなると、人間を英語力で測ることが当たり前のようになり、ネイティブ・スピーカーに限りなく近く英語を話せる人が何だか「偉い」ようになり、英語が苦手な人間は中身がどんなに立派であっても尊敬されないどころか就職もままならない、という歪んだ状況が生まれます。

(7ページ)

たかが英語じゃないか、と言ってあげたい。日本国民全員が英語の達人になる必要もなく、それぞれが得意なことを生かすことが社会の活性化につながると思います。

(205ページ)

 

英語学習法の本は、グローバル化万歳!英語万歳!みんな英語を勉強しろ!的なトーンで書かれていることが多いんですが、この本ではそのようなノリは一切ありません。

「英語英語言ってるいまの状況ってすごく暑苦しい感じして嫌になったりするけど、でもやっぱりちょっと英語できると便利だよね」

くらいの地に足のついた、冷静なテンションから話が展開されていきます。

 

この冷静な分析こそがこの本のいいところです。

 

変なことがひとつも書いてない。悪く言えば"普通"なんだと思いますが、結局、英語学習にはやはり王道はなく、地道にやるしかないということなんだと思いますね。

この本はそんな基本を思い出させてくれます。

 

さてもうひとつ、この本を他の巷の英語学習本を区別する点は、最新の事情を取り入れて書かれていることです。

大学やNHKの講座で英語を教えてきた著者ならではの「現場の事情」が多く書かれています。

この本の後半では留学の是非や、留学を成功させるためにはどうすればいいのかが詳しく書かれていますが、その章にも、実際に留学に行った高校生の最新のアンケート結果が載っていました。

大学入試改革や、小学校での英語授業の必修化、また企業がどんどん英語力を社員に求める傾向など、英語教育界というのは特に最近ものすごい勢いで変わっています。

この本はそれら最新の事情についても知ることができるという点で他の本とは差別化されていますね。

 

 

目的設定と発音が最初のステップ

以前『一生モノの英語勉強法』という本をレビューしました。

『一生モノの英語勉強法』を読んでわかった!「理系的」に英語を勉強する方法!

 

『一生モノの英語勉強法』では、英語学習においては、まず明確な目的を設定することが大切であり、具体的な勉強は発音の習得が最初のスッテプだと書かれていました。

 

で、今回この『本物の英語力』を読んで驚いたのですが、全く同じことが書かれていたんです。

英語学習の成否を決めるのは、まずは「何のために英語を学ぶか」という、英語学習の「目的」です。

(12ページ)

本書では、「英語の音」から話を始めたいと思います。

(21ページ)

 

やはり、突き詰めて考えるとこれが最適解ということなんでしょうかね。

 

ただ、『本物の英語力』では、発音については"ハチャメチャと完璧の中間を狙うのを目標とせよ"とあります。

めちゃくちゃな発音だと英語という言語は全く通じないので、発音を気にしなければいけない。しかし完璧を目指しすぎると自分の発音に対して不安になってしまい、黙り込んでしまうことがある。だから最低限伝わる程度の発音を目標ラインにせよ。

ということです。

 

これも現実的で、状況を冷静に分析した上で最適解を示してくれるこの本を代表するような考え方といえますね。

 

とにかく読め!

鳥飼先生の英語学習法の中心は、ずばり読書だと言っていいでしょう。

多くの学習者を悩ます語彙についても、文脈と一緒に覚えなければ意味がないので、単語カードなどでの暗記ではなく、とにかく英文を読みまくれという風に書いてあります。

回り道を覚悟して、ゆっくり着実に語彙を取り込むしかないように思います。どうやって?英文を読むのです。(42ページ)

 

その方法については、

「多読」と「精読」を組み合わせて、ともかく大量に英文を読んでみましょう。(46ページ)

とのこと。

これは確かにおすすめの方法ですね。

 

多読というのは、わからない単語があっても飛ばして読んで、全体の意味をとることに注意しながら大量に英文を読む方法、精読というのは細かい単語や文法に注意して読む方法です。

以前、このブログでも多読と精読について詳しく書きました。

(参考記事)

洋書は切り刻んで読め!初心者~中級者におすすめの「英語力を上げるための」洋書の読み方!

 

鳥飼先生も推薦する方法だということがわかり、正直ちょっとテンション上がりましたね笑。

 

日英翻訳をすればしゃべれるようになる!

日本語から英語への通訳翻訳は、発信型コミュニケーション能力育成に効果的です。(85ページ)

日本語から英語に訳す、いわゆる日英翻訳・通訳を行うことで英語の発信能力が高まるということが書かれていました。

 

要するに、和文英訳のトレーニングをすれば英語がしゃべれるようになるってことです。

 

これにはハッとしました。

というのも、ここ最近自分が力を入れてやっていて、効果を実感している学習方法だったからです。

 

最近のぼくの勉強内容といえば、英検の過去問をひたすら英訳することです。

(詳しいやり方は下記の記事に書きました)

英語がペラペラになるための最強の教材が"英検の過去問"である3つの理由

 

英訳って、本当に発信力が上がるんです。

この本を読むことで、そのことも再確認できましたね。

 

様々なアプローチを使う

英文を読むのを学習の中心にするのが特徴だとさきほど書きましたが、それ以外にもいろいろな学習方法がこの本では紹介されています。

日英翻訳もそうですし、発音や、文法学習についても詳しく書かれています。

 

著者によると、それらはどれも大事なものということです。

どれかひとつがかけてもだめ、という前提で書かれているように感じました。

 

今回この記事のタイトルに「真っ当な英語学習法を示してくれる」と入れましたが、様々なアプローチを使う、というのが英語学習の間違いない方法であり、王道だと思います。

 

最近よく見かける英語教材では、

文法なんかやっても意味がない!会話だ!

聞き流していればできるようになる!

ライティングが一番大事!

など、ある側面に偏った宣伝文句が目につきますが、結局のところ、どれも大事なんですよ。

 

英語学習法が書いてある本でぼくがいちばん好きなのが『わたしの外国語学習法』(ロンブカトー)という本なのですが、その本にとてもいい言葉が載っていたのを思い出しました。

外国語は、四方八方から同時に襲撃すべき砦である 

わたしの外国語学習法 (ちくま学芸文庫)

わたしの外国語学習法 (ちくま学芸文庫)

 

 

まとめ

というわけで今回は鳥飼玖美子先生著『本物の英語力』をレビューしてみました。

この記事では本の一部を紹介しましたが、ここで紹介したことの他にも、有益なことがたくさん載っています。

 

特に最終章では「英語を仕事にどう活かしていけばいいのか」について、実例をいくつも交えて説明しており、仕事で英語を使っていきたいと少しでも思っている人には必読の内容となっています。

 

また、各種資格試験に対する考えや、語学研修、留学についても、現場を知っている人だからこそわかる情報が満載です。

 

英語学習についてはいろいろな本が出ていますが、"本物の英語力"を見につけたいと思っている人は、しっかりとした学習方針を示してくれるものとして、この本を手元に置いておくと良いのではないでしょうか。

本物の英語力 (講談社現代新書)

本物の英語力 (講談社現代新書)

 

 

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