『なぜ、その英語では通じないのか?』(マーク・ピーターセン)の感想&レビュー
- 作者: マーク・ピーターセン
- 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
- 発売日: 2016/04/05
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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著者はマーク・ピーターセン。
この人は『日本人の英語』(岩波新書)という本で有名な人です。
この『日本人の英語』は以前このブログでおすすめの英語参考書トップ10を紹介したときにもランクインさせたくらい個人的にも好きな本で、日本人が苦手とする「aとtheの違い」や「時制の正しい使い分け方」についてこれ以上ないというくらいわかりやすく書かれている名著でした。
- 作者: マーク・ピーターセン
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1988/04/20
- メディア: 新書
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そんなマークピーターセン氏の最新刊となるのがこの『なぜ、その英語では通じないのか?』です。
最近発売されたということで買って早速読んでみましたが、やはり期待を裏切らず、英語を勉強している人必読の名著でした。
今回は、この本のすばらしいところを紹介していきたいと思います。
英作文・スピーキング力が上がる
本書のタイトルにもなっている『なぜ、その英語では通じないのか?』という問いに対する答えですが、この本では
日本語を単純に英語に置き換えて話すから伝わらない
というのを一貫した大きな前提としていると感じました。
この本は3章に分かれていて、最初のチャプターは"日本語と英語のギャップを考える"です。
「日本語の感覚」で取り入れてしまった疑似英語を使って書いたり話したりすると、重大なコミュニケーション障害を引き起こしかねません。
(7ページより)
たとえば、英会話を習うと必ずといっていいほど最初の段階でならう
What's your hobby? (趣味は何ですか?)
の「hobby」という単語ですが、これは「hobby=趣味」という風に単純に置き換えて考えてしまうと、ちょっと違ったように聞こえてしまうようです。
英会話の授業で学生に"What's your hobby?"と初めて訊かれたとき、私はいささかびっくりして、"I don't have a hobby?"と答えた。
(中略)
私がびっくりした理由は2つある、1つは、なぜ学生は、暗黙の前提として、私にhobbyがあるはずだと思っているのか、不思議に感じたからである。hobbyという英語は通常、切手収集や、毛針作り、鉄道撮影、プラモデル、バラ園芸などのような比較的「専門的」な趣味を表す言葉なので、そのようなhobbyがない人は世の中にたくさんいるだろう。
(22-23ページ)
日本語で「趣味」というときは、単純に好きなこと全般を指しているのに対して、英語の"hobby"は、専門的な趣味をイメージさせるので、日本語の「趣味」の感覚で"hobby"を使うとギャップが生じてしまうということですね。
ちなみに、日本語の「趣味はなんですが?」にあたる英語訳として、マークピーターセンが提案しているのは
What do you like to do in your spare time?
(23ページ)
です。つまり「空いてる時間に何をするのが好きですか?」というわけです。んー、なるほど。
このように、日本語と英語の間にあるギャップを、特に日本人が間違えやすい例を選びながら埋めていってくれるのがこの本の最大の魅力なんです。
この本を通読することでこの"日本語と英語のギャップを考えるトレーニング”を積むことができ、結果的に自分の意図したことを英語で伝える力、つまり英作文やスピーキング能力が上がるんです。
読みやすい
この本、めちゃくちゃ読みやすいです。
字が大きく、分量もそんなに多くないのでサクッと通読することができます。
しかも、本書の中では多くの英文が登場しますが、そのどれもが読みやすく、中学~高校初級の知識があれば読める英文がほとんどで、英文が多いのにストレスなく読み進めることができます。
これは『日本人の英語』で例文としてシェイクスピアの文を取り上げたりしていたのを考えるとものすごい違いです。
著者本人のエピソードもふんだんに取り入れられており、それらもこの本が読みやすくなっている理由となっています。
これまで見たもので最も「違和感」があったのは、浜崎あゆみの曲「Virgin Road」の広告である。もちろん、これはちょっと特別なケースだ。具体的に言えば、virgin roadは「バージン・ロード」とカタカナ表記になっていても、気持ち悪い和製英語なのである。もし、日本人が、アメリカの結婚式場の広告であの通路のことをShojo-dori(処女通り)と書かれているのを見かけたら、似たような気持ちになるかもしれない。また、アメリカでは男性同士の結婚もあるので、その場合、Dotei-dori(童貞通り)と書く可能性もある。
(19ページ)
この部分は盛大に笑わせてもらいましたw
こういう面白いエピソードが満載なのもこの本の特徴です。
とことん実践的
『日本人の英語』は3部作のシリーズになっていまして、その3作目『実践 日本人の英語』はそのタイトルの通り"実践的な面"に焦点を当てた本でした。
しかし、今回の『なぜ、その英語では通じないのか?』では、さらに実践的な内容となっていました。
というのも、この本では各テーマの最後に"覚えておきたい重要例文"として、そのパートで出てきた例文がまとめられているんです。
これは『日本人の英語』シリーズを読んできた自分としては衝撃的でした笑。
これは、この本がただ1回読んで本棚にしまっておく"普通の本"ではなく、"参考書"として使えるということを意味します。
1回通読するだけでももちろんためになるんですが、2回目は例文を徹底的に読み込んで、3回目にまた通読するというような方法で勉強ができるんです。
まとめ
というわけで今回はマーク・ピーターセン著『なぜ、その英語では通じないのか?』の感想&レビューを書いてみました。
ここであげた内容以外にも、
- 最適な「~べき」の表現はどれか?
- "to~"と"~ing"の違いは?
- コンマを使いこなす方法
- 「しかし」を表す英語
- 受身の効果的な使い方
などなど、読んでためになる内容が満載です。これらは上級者でも「なんとなくはわかっているけれどうまくは説明できない」ことの多いテーマですが、この本を読むことで、霧が晴れたようにこれらについての理解を深めることができるでしょう。
「これこれ、これがよくわかってなかったんだよ!」
そう思わず言ってしまいそうになるくらい、"かゆいところに手が届く"内容の詰まった本です。久しぶりに衝撃的な英語本を読みました。英語を勉強している人全員に一度は読んでもらいたいなと思うくらいの名著。めちゃくちゃおすすめです。
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