英語ライティング初心者がまず取り組むべきおすすめ参考書3冊と勉強法
2016年から英検2級にライティング問題が追加されたことや、TOEIC SW(スピーキング・ライティング)テストの受験者が毎年増加しているのを見ると、
英語を勉強する上で「話す・書く」力を伸ばす必要性がどんどん高まっている
のがわかります。
これは、グローバル化する社会でさまざまな国出身の人と対等にやり合うためには、従来日本で重視されてきた「読む・聴く」力以外にも、「話す・書く」力が大事だから、というのが大きな理由でしょう。
簡単に言うと「自分から英語を発信する力」を高める必要が出てきているということですね。
「自分から発信する力」というと、「話す力」、つまりスピーキングを想像する人がほとんどです。
しかし、「書く力」、つまりライティングも実はかなり重要なんです。
仕事のやり取りをすべて人と実際に会ったり、電話で話して進める人はいないと思います。だいたいLINEなどのチャットアプリや、メールを使ってやり取りしますよね。
それに、個人や企業単位で世界に向けて何かを発信するときも、データ量の少なく、いつでも見れる活字メディアを使うことが多いと思います。
このように、見落とされがちですが、実はライティング力ってすごく大事なんです。
ただ、「ライティングって、どうやって勉強したらいいかわからない」という人も多いと思います。
今回は、そのような初心者を対象に、
- まずは絶対に取り組むべき3冊のテキスト
- 具体的な勉強方法
をまとめてみました。
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文法を"正確に使える"ようにする
ライティングについて書かれた参考書を本屋で見てみると、
「いかに上手く英語の文章を書くか」
について書かれた本が多いです。
ところがここに落とし穴があるんです。ライティングの勉強をしたいな、と思って本屋に行って適当にこのような本を選んで取り組んでも、ほとんどの人はライティング力が上がらずに挫折してしまいます。
こうなってしまう理由は単純。
まだこのレベルに達していないからです。
上手い英語の文章の書き方を学ぶ前に、基礎となる文法をしっかりと固めなければいけないんです。
"文法"と聞くとTOEICや英検などの4択穴埋め問題を想像する人が多いかもしれませんが、ライティングにおける文法学習はそれとは全く違うものです。
当然ですが、実際に英文を書くときは4択の選択肢から単語を選ぶわけではありません。
自分の中から正確な文法で英文をひねり出さなければいけないんです。
4択問題なら"some"と"any"のうちから正解を選択できるかもしれません。では、"some"と"any”を正確に使い分けて英文を作れますか?
急に難易度が高くなったのではないかと思います。
ライティングにおける文法学習では、このように4択問題とライティングの際に要求される文法力に大きな差があるのを意識して取り組む必要があります。
さて、具体的にどの参考書を使っていくのかですが、これには『英作文ハイパートレーニング 和文英訳編』がベストです。
「え、大学入試の参考書??」
と思ったかもしれませんが、これがベストなんです。
実は、ライティングの参考書は、大学入試用の参考書が一番充実しています。
一般向け(社会人向け)の英語参考書は、いままでライティングやスピーキングを軽視してきた英検やTOEICで高得点を取ることに照準が合わされているので(最近は変わってきましたが)、大学入試のライティング教材だけが異常に充実しているという事態になっているんです。
そしてこの『ハイパートレーニング 和文英訳編』は、その中でもトップクラスに使えるテキストです。
全部で66のレッスンに分かれており、それぞれのレッスンは
和文英訳問題2題
文法の解説
練習問題
という構成になっています。
使い方としては、筆者のレールにそのまま乗っかって、1ページ目から順番に読み進めればOKです。
レッスン1は「疑問文の作り方」で、例題は
あなたは朝食に何を食べますか?
(What do you eat for breakfast?)
から始まりますが、このレベルをばかにしてはいけません。
さきほども言いましたが、「文法的にミスのない英文を自分で作り出す」ためにはしっかりとした文法の基礎が必要です。
それに、疑問文の作り方から始まるものの、関係代名詞や分詞の使い方など、ライティングにおいて絶対に押さえておかなければいけない項目もわかりやすく解説されています。到達点は意外と高いですよ。
ぼくがどうしてここまで基礎文法の重要性を強調しているのかというと、ライティングではスピーキングと違って、文法をミスると取り返しのつかないことになってしまう場合が多いからです。
スピーキングでは、ちょっと文法的にミスがあったり、あいまいな箇所があったりしても、
「ちょっと待って、それって〇〇ってこと?」
といった具合に、すぐにお互いの認識の違いを軌道修正しながら話を進めることができます。
それに対し、ライティングでは目の前に人がいないのでリアルタイムで認識の違いを解消できず、勘違いが起きやすいんです。
当たり前のことですが、
自分の書いた英文を見た相手は、字面だけを頼りに意図を理解しようとする
のを念頭に置いておく必要があります。
"伝わる英語"の書き方を学ぶ
英文ライティング資格の最高峰として、工業英検という試験があります。
論文や特許、説明書などの技術系ライティング力を測る試験です。
この工業英検において、最も良いとされる英文は、次の3つを満たしている英文だとされています。
Correct (正確)
Clear (明確)
Concise (簡潔)
これらをまとめて"3つのC"と呼んだりします。
要するに、誤りがなく、言いたいことがわかりやすく、そしてスリムな英文が最も良い英文だということです。
これは技術系ライティングだけではなく、ライティング全般に言えることでしょう。
Correct(正確)については、文法的な誤りをなくすことで、もう説明しました。
ここではClear(明確)でConcise(簡潔)な英文を書くためのトレーニングについて書きます。
このトレーニングには、『会話もメールも 英語は3語で伝わります』を使うのがおすすめです。
この本の筆者は一流の技術翻訳者。
明確で簡潔な英文を作るための具体的なアドバイスが多く紹介されています。
ひとつ紹介すると、「受け身を捨てる」のが大事だと筆者は言います。
受動態は、「それをだれがやったのか」をあいまいにし、弱い印象を与えてしまいます。日本人が頻繁に使ってしまいがちな表現です。
ちょっと本書の203ページに載っている例から引用してみます。
旅行の行程はパンフレットに記載されている
という意味の英語を作るとします。
受動態で書くと、
The tour schedule is written on the brochure.
となりますね。
これを能動態で書くとこうなります。
The brochure shows the tour schedule.
こっちの方が語数が少なく簡潔で、力強く、言いたいことが明確に伝わるのがわかると思います。
この本ではこのようなコツを多く学ぶことができます。
「英語ではこう表現する」というルールを頭に叩き込むことで、"英語の発想"そのものを考え方として一度自分の中にインストールしないと、あいまいで何が言いたいのかわからない日本語をそのまま英語にしたようなライティングから抜け出せません。
絶対にこの本には取り組んでください。
ちなみに、一冊目で紹介した『ハイパートレーニング 和文英訳編』とこの本は同時進行で進めていってOKです。
ただし、この本は読もうと思ったら1日で読めてしまうのに対し、『ハイパートレーニング』は1ヶ月程度は集中して取り組む必要があるので、勉強時間としては8:2くらいの割合で進めていくのがベストです。
(このテキストについては別の記事で詳しく書いたのでこちらも参考にしてみてください)
⇒『会話もメールも 英語は3語で伝わります』のレビュー!英語学習者は絶対に読むべき良書!
英語で文章を作るトレーニングをする
さて、ライティングのための文法トレーニングをやり、簡潔でわかりやすい文を作るために気をつけるべきルールも学んだ、という段階になったらいよいよ英語で文章を作るためのトレーニングへ移行します。
これには『英作文ハイパートレーニング 自由英作文編』を使います。
いちばん最初に紹介した『ハイパートレーニング 和文英訳編』の続編にあたります。
エッセイにしても、Eメールにしても、英語のライティングにおいては文章の構成がしっかりとしていなければいけません。
しっかりとした文章の構成とは何かというと、これは論理明快で説得力のある文章の構成を指します。
TOEIC SW(スピーキング&ライティング)テストのEメール作成問題において、最高点の4点を取るためのポイントとして、
筋の通った文章にするために一貫した論理構成で文章を構築する
というのがあります(公式が発表しています)。
このように、良い英語の文章とは論理構成が一貫している文章です。
小学校の時に書いた作文のように、ただ思いついたことを漫然と書き散らしただけでは全然ダメなんです。
『ハイパートレーニング 自由英作文編』を買ったら、第1章の「エッセイライティングの書き方編」を熟読してください。本書の最初から65ページくらいまでの部分です。
ここを読めば、基本的なエッセイの書き方がわかります。
詳しくは本書を読んでいただくしかないのですが、簡単にエッセンスだけ紹介すると、
主張→サポート
の流れを徹底させるのが英語ライティング力を上げるためにまず意識すべきことです。
サポートとしていちばんよくあるのは「理由」でしょう。
たとえば、
学校の英語の授業はスピーキングにもっと力を入れるべきだ。
というのが主張だとしたら、
なぜなら、スピーキングは実用的だからだ。
のような理由をつけることで、主張の説得力を上げることができます。
また、この本では「譲歩&打ち消し」も紹介されています。
これは、一度反対として予想される主張を認めた上で、それに改めて反論することです。
学校の授業はスピーキングよりリーディングにもっと力を入れるべきだ。
たしかに、スピーキングは実用的かもしれない。
しかし、日本という国において英語を話す機会は少ない。実際には、英語でEメールを読んだり、といったリーディング力が必要とされる機会の方が多い。
このような流れが「譲歩&打ち消し」です。
ちょっと難しく説明してしまいましたが、大事なのは主張だけじゃダメだということです。
日本語のコミュニケーションでは、何かを主張して理由を言わないのが認められます。
しかし、英語でのコミュニケーションでは主張をサポートしないと説得力がないものと判断されます。
アメリカのニュース局のCNNなどを見ているとわかりますが、街の人のインタビューでも、答える人は何か言ったあとに「Because・・・(なぜなら~)」と補足します。子供でもです。
日本人は自分から発信するのが苦手な人が多いんです。
このテキストを使うことで、主張とサポートなど含めた、英語で発信するときに気をつけなければいけないルールを学んでいきましょう。
ちなみに、第2章からは具体的に問題を使っての演習になりますが、大学入試の参考書ということもあって、
「社会人になっても家族と暮らしたいか、一人暮らししたいか」
といったテーマも出てきます。
こういうのはスルーしていただいて大丈夫です。
最初に紹介した2冊とは違い、この本は徹底的にやる必要はありません。大事なのは第1章のエッセイの書き方の部分です。ここだけは熟読してください。
まとめ
というわけで今回は英語ライティング初心者がまず取り組むべき3冊の参考書と勉強方法についてまとめてみました。
これら3冊のテキストは、英文ライティング初心者がまずは身に付けるべきである、
- ミスをしない文法力
- 簡潔でわかりやすい英文を書く力
- 論理明快な英語の文章を構成する力
の3つの力を上げることにそれぞれ対応しています。
ここまでやれば、英語ライティングのための基礎は身に付きます。
さらにライティング力を上げていきたいという人は、TOEICのスピーキング&ライティングテストや、英検2級に挑戦してみるといいかもしれません。
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