洋書で英語を勉強したい人におすすめ!『楽しく習得! 英語多読法』のレビュー。
ちくまプリマー新書から出た『楽しく習得! 英語多読法』という本を紹介してみようと思います。
これを書いたのはクリストファー・ベルトン氏。この人は、『ハリーポッターが英語で楽しく読める本』シリーズで有名です。かなり売れていて、本屋で見かけたことのある人も多いのではないのでしょうか。
ぼくはこの人が前に書いた『英語は多読が一番!』という本を読んだことがあり、その本が非常にためになる内容だったので、今回新しく出版されたこの『楽しく習得! 英語多読法』も本屋で見つけたときに即購入してしまいました。
洋書に特化した教科書
洋書をとにかく読みまくる、いわゆる"多読"は、英語学習者の中でもかなり認知が広がってきた感があります。
しかし、その高い注目度にもかかわらず、
洋書ってどうやって手をつけたらいいの?
という根本的な質問に答えてくれるような、"洋書読書に特化した教科書"って今までほとんどなかったんです。
ところがこの本の第1章では、そんな"洋書をこれからガンガン読んでいきたいのだけれどもハードルが高くてどうしたらいいのかわからない"というな人におすすめの情報が多く載っているんです。しかも、そのどれもがかなり的を得た内容でした。
文法的な分析をしない
(略)
自分の読んでいる文を学校で習った文法の枠組みにはめこもうとしても、そう簡単にはいきませんし、多くの場合は時間の無駄にしかなりません。自分の読んだものを正しいものとしてそのまま受け入れ、もしもその文の仕組みがわからなかったとしても、気にしないようにしましょう。
洋書を多読していく上で重要なのは、文法の分析をしないことなんです(実は普段の学習から、あまり文法を重視すべきではないんだけれど・・・)。
今まで学校でしか英語を勉強してこないで、生の英語に触れてこなかった人は、学校英語だけだった時間が長いほど、実際の英語が学校で習った文法で説明できないような英語だらけだということに驚くんです。
でも、これを習ってきた文法事項に当てはめて解析しようとすると、いつまでたっても読めるようになりません。というか、そもそも文法的にちゃんと説明できない英文って、多いんですよ。
大事なのは、その英文がどういう"意味"なのかを"大きな視点"で"理解"しようとすること。
前後の流れや、自分の持っている知識などを総動員して、意味を取ろうとして読むんです。このルールに従って読んでいくと、不思議と量をこなしていくうちに、洋書がどんどん読めるようになっていきます。
日本語で楽しんでいる種類の本を選ぶ
普段から日本語で楽しんでいる種類の本だけを読みましょう。たとえば、日本語でファンタジーの本を読まないのなら、英語でもそのジャンルの本は選ばないほうがよいでしょう。
本っっっっ当にその通り。
これはなぜかというと、ずばり「楽しくないから」なんです。
この本のタイトルにも『楽しく習得!』とあるように、洋書の多読が効果的なのは、それが楽しいからなんです。好きこそものの上手なれ、というわけです。
洋書読書は、慣れないうちはかなり気力と体力を使います。そのためには、好きな本を読むことでモチベーションを上げていく必要があります。好きじゃないジャンルの本は絶対ダメ。続かないんです。
自分が好きな本はじゃあ何なのかと考えると、やはりそれは普段日本語で読んでいるジャンルの本ということになりますよね。たとえばぼくの場合は、読んでいるのはほとんど現代のことについて書かれたノンフィクションです。小説も読むのですが、割合としては30冊に1冊小説を読み、あとはすべてノンフィクションというくらいです。なので洋書もほとんどノンフィクションを読んでいます。
ちなみに、日本語で普段本を読まないという人は向いてないのでやめましょう。
やはり洋書多読が効果を発揮する最低条件は「楽しむこと」で、読書が好きじゃない人はうまくいきません。
ちなみにその他にも
- 自分の理解力にあった本を選ぶ
- 辞書を使い過ぎない
などの、洋書を読んでいく上でのコツや、さらには
- 単語の意味を推測する手がかりは?
- 洋書を読む上で絶対に覚えるべき単語リスト
なども載っていて非常にためになる内容です。
洋書に出てくる語彙が満載
この本の最大の特徴なんですが、とにかく大量の英語表現が載っています。
ここまでで紹介してきたような"洋書の読み方"についての情報も多いのですが、具体的な単語や熟語を紹介しているページが半分以上を占めています。
こう言うと、「ただの単語集なら興味ないや・・・」と思う人もいるかもしれませんが、"普通の単語集には載っていないんだけれども洋書を読む上では必要な単語"が載っているので、かなりためになるんです。
たとえばキリスト教関係の単語ですね。
英語は2000年間このキリスト教文化に浸されて、現在の姿に至っています。そのため、日常生活で使われる表現や慣用句の多くには、背景となるこの文化がしみわたっています。
英語のネイティブスピーカーは、一般に幼いころからキリスト教の教育を受けるため、このような表現や慣用句を無意識のうちに使いますし、作家たちも読者がきちんと理解してくれることを前提にして、本の中でそれらを使っています。
たとえば、
in heaven
という言葉がありますが、これは「天国で」つまり、死んでいることを意味しますが、その他に「最高に幸せな状態で」という意味も表します。
こういう表現って、単語単位では意味がわかってしまうので、辞書を引こうと思うことが少なく、なかなか浸透していかないんですよね。
この本はそういった表現が大量に集められているのでとても貴重な存在です。
第3章では、ジャンル別に英語表現や読み方、おすすめの本が紹介されています。
これが結構使えそうです。
たとえば、ミステリーやサスペンスを読むとしたら、犯罪捜査に関する語彙が必要になります。SFなら難しい科学用語が多く出てきます。
それら小説の主要なジャンルについての語彙、また読む際のコツについてまとめられていました。
難易度は高め
本書は、英語をすでに何年か学んできた人、英語の読解力がある程度身についている学習者を対象としています。したがって、英語の本をどうやって実際に読むかというアドバイスだけでなく、英語の読書力を磨くためのアドバイスを提供しています。
本書にこのようにある通り、この本に書いてある内容のレベルは高めです。
英語表現が多く載っていますが、専門性が少し高いものや、ことわざも多くレベルが高いです。なので、中~上級者で洋書を使った学習を進めていきたいと考えている人にとっては最適です。
しかし、ぼくは初心者でもこの本はためになるのではないかと思います。レベルの高い英語表現が多く載っていますが、それについての解説が詳しく、興味深い内容になっています。とりあえず1回読んでみて、あとはちょっとずつ読み返してこの本に載っている語彙を習得していく、という方法でやるのがおすすめです。
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