イタリア語の発音が簡単って本当なの?発音記号を書き出して検証してみた結果がこちら。
「イタリア語の発音は日本人にとって簡単」
とよく聞きます。
外国語学習においてはこのような「○○語の~は簡単」「~語は難しい」という文句をよく耳にするのですが、たいてい間違いというか、
「まぁそう言えるかもしれないけど実際はもっと複雑だよね」
という感じなんです。
今回は、外国語学習においてよく言われる
「イタリア語の発音は簡単である」
について、発音記号を書き出して検証してみようと思います。
母音
まずは母音から見ていきましょう。
イタリア語で使われるについて、発音記号をすべて挙げてみます。
[ a ] [ e ] [ ɛ ] [ i ] [ o ] [ ɔ ] [ u ]
この7個がイタリア語で使われる母音です。
ただし、この7つのうち、 [ e ] と[ ɛ ] , [ o ] と [ ɔ ] については、ほとんどのイタリア語話者が厳密には区別を行っていない音なんです。
たとえば [ e ] と[ ɛ ] は、日本人にとってはどちらも「え」と聞こえますが、これらは、開口音、閉口音と呼ばれ、口の開き具合によってちゃんと区別された別の音なんです。
ただ、これらの区別をしないと単語の音が丸かぶりしてしまうセットを発音するときを除き、大部分のイタリア語話者は区別しないので、日本人学習者である私たちもこれを厳密に区別しながら学習する必要はありません。
これをふまえると、イタリア語の母音は、5個あるということになります。
母音が5個、なんかどこかで聞いたことありませんか?
そう、これは日本語と一緒なんです。
しかも、個数が同じというだけではないんです。
イタリア語の文字「a」「e」「i」「o」「u」にこれらの母音が対応していますが、そのまま日本語の発音で「あ」「え」「い」「お」「う」と発音すれば大丈夫です。
これは他の言語と比べてもかなり楽だと言えるでしょう。
この前同じ検証をフランス語でもやりました。
この記事の中でも書いたんですが、フランス語の母音は16個もあるんです。
ちなみに発音のデパート中国語は母音だけで30個以上あります。
普段5種類という少ない数の母音しか使わない日本語を話している私たちにとって、母音という観点ではイタリア語はかなり楽ですね。
ただし一応注意点として、日本語の母音「あいうえお」とイタリア語の母音が完全に同じではないことを補足しておきます。
たとえば、イタリア語の「u」は日本語の「う」よりも唇をもっと前に突き出して発音します。他の母音についても完全に同じではありません。
なので、とりあえずは日本語の「あいうえお」と同じように発音し、慣れてきたら教材のCDなどを真似してイタリア語っぽい発音に近づけていくのが良いでしょう。
まぁそうはいってもやはり日本語の「あいうえお」で許容範囲に収まってしまうのは、かなり学習しやすいといえますね。他の言語、たとえば英語では日本語の母音と同じように発音するとたいてい伝わらないので。。
子音
続いて子音です。
[ m ] [ n ] [ ɲ ] [ p ] [ b ] [ t ] [ d ] [ k ] [ g ] [ ts ] [ dz ] [ tʃ ] [ tʒ ] [ f ] [ v ] [ s ] [ z ] [ ʃ ] [ j ] [ w ] [ l ] [ r ] [ ʎ ]
さらに音を細かく調べていくともっと数が増えたりすることもあるようですが、学習者として実用レベルのイタリア語習得を目指すという観点では、上に挙げた23個がイタリア語の子音です。
日本語で使われる子音は16個なので、数的にはイタリア語の方が豊富な子音を使っていることがわかりますね。
では、この中で、"特別なトレーニングなしに日本語とほとんど同じような発音でOKな音"を赤字で示してみようと思います。
[ m ] [ n ] [ ɲ ] [ p ] [ b ] [ t ] [ d ] [ k ] [ g ] [ ts ] [ dz ] [ tʃ ] [ tʒ ] [ f ] [ v ] [ s ] [ z ] [ ʃ ] [ j ] [ w ] [ l ] [ r ] [ ʎ ]
さらに、この中で、"練習は必要だがすぐに習得できる発音"を青字にしてみます。
[ m ] [ n ] [ ɲ ] [ p ] [ b ] [ t ] [ d ] [ k ] [ g ] [ ts ] [ dz ] [ tʃ ] [ tʒ ] [ f ] [ v ] [ s ] [ z ] [ ʃ ] [ j ] [ w ] [ l ] [ r ] [ ʎ ]
というわけで、子音が23種類もあるイタリア語ですが、その中の19個はそこまで苦労せずに出せる音だということがわかりました。
残る音のうち、まず [ f ] [ v ] ですが、これはそのままイタリア語の文字の「 f 」と「 v 」に対応しています。
これらは、上前歯を下唇につけて発音するんですが、日本語では使わない音です。
日本語でも「ヴァイオリン」のように「 v 」を意識した表記もありますが、「ヴ」の部分の発音は「バブル」の「バ」と全く同じように発音すると思います。
[ l ] [ r ] の区別は最難関かもしれません。[ l ] は日本語の「らりるれろ」というよりは、もっと舌を上あごにべったりつけるイメージで発音しなくてはいけません。
「 r 」についてはいわゆる"巻き舌"ですが、イタリア語では、ロシア語などと比べると、アクセントがあるとき以外はそこまで大げさに発音しません。
やりすぎるとかえって変なので、r の音は巻き舌なんですがそこまでやりすぎないようにしましょう。
それよりも大事なのが「 l 」と「 r 」をしっかりと区別することです。
l と r の違いは難しいところですが、子音を見てもイタリア語は日本人にとってかなり楽だといえるでしょう。
その他の要素
イタリア語は「子音+母音」の並びが多く、この点で日本語とよく似ています。つまり、区切り方が似ているので、かなり発音がしやすいです。
他のヨーロッパ言語では子音が連続することが頻繁に起きます。
たとえば英語では、子音が2つ3つ続くことは当たり前で、これがまさに英語の発音を難しくしているんです。
ただし、アクセントには注意です。
初級テキストを見ると、"基本は2番目の母音にアクセントがある"などと書かれているんですが、これに当てはまらない単語も多く、結局は単語ひとつひとつのアクセントを確認しながら学習を進めていくことになります。
結論
母音、子音、音の区切り方を考えると、
イタリア語の発音は日本人にとっては簡単!
という結論に達しましたw
フランス語のときに引き続き、またしても世間の評判が正しかったことになります。
疑ってすみませんでした!
だたし、簡単だといったもののアクセントだけは注意です。
個別の単語の発音、またそれらがつながることによって生み出されるイタリア語っぽいリズム、それらは一朝一夕で身につくものではないようです。
アクセントを間違えてしまうと、相手に"ストレス"を与えてしまうだけではなく、それだけならいいんですが最悪伝わらないので、イタリア語を学習する人は学習の初期段階から、個々の単語の発音を確認しながら勉強をすすめるべきですね。
イタリア語の発音をしっかり徹底的にやりたいという人には、一応『イタリア語発音トレーニング』のような発音に特化した参考書も出ています。
ただ、全くのゼロからはじめるひとは、初級テキストの冒頭でたいてい発音練習ができるようになっているので、そこをさらっとやり、学習を進めていく中でそれっぽいのに近づけていくのが良いのではないかと思います。
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