赤本の英検過去問を1級所持者のぼくが評価してみた。他社と比べてどうなのか?
英検1級のかずーい(@kazuui81)です!
赤本とは、教学社が出している大学入試の過去問です。
↑このような真っ赤なテキストを書店や学校の本棚などで見かけたことがある方は多いのではないでしょうか?
大学入試を経験したことのある方なら、実際に高校生の時に使っていた、という人もかなりいると思います。
で、今回、その赤本から、なんと英検の過去問が出ました。
(昔赤本にかなりお世話になった経験のあるぼくとしては、赤本の英検過去問って正直違和感ハンパないです・・・。)
今回、赤本から英検過去問が出た背景としては、大学入試において英検を活用する大学が増えていることや、今後、センター試験に代わる「大学入学共通テスト」での利用も検討段階に入っているというのがあると予想できます。
とにかく、今後大学入試において英検が重視されるのはほぼ間違いなく、これはそうなった時に英検関連の書籍がバカ売れする事態になることを意味します。
なので、教学社としてもどんどん参入していきたいという思惑があるのでしょうね。
英検の過去問と言えば、ここ10年以上ずっと旺文社から出ているものが圧倒的にシェアナンバーワンです。
その他の出版社からも英検の過去問は出ていますが、正直に言ってどれも旺文社の劣化版という感が否めませんでした。
今回の赤本に関しても、最初書店で見かけた時は
「どうせまた旺文社の劣化だろ・・・」
と思ったのですが、パラパラめくってみてびっくり、
「めっちゃ使えるじゃんこれ!」
という感じだったので、赤本と旺文社のものをそれぞれ買ってきて、徹底比較してみました。
(左が赤本、右が旺文社)
今回は、英検1級所持者のぼくが、これまでの圧倒的スタンダードであった旺文社の過去問と比べながら、赤本の英検過去問を評価・レビューしていこうと思います。
※今回比較に用いたのは3級の過去問です。すべての級に関して今回書いたことが当てはまるわけではないのでご注意を。
コスパ良すぎ
まず、値段とボリュームを見てみます。
旺文社の3級の過去問は、過去6回分で定価1200円、別売りのCDが定価1000円です。
2200÷6≒367円が1回あたりの値段になります。
これに対して赤本は過去9回分がCD付きで定価1800円。
1800÷9=200円が1回あたりの値段となります。
(比較に用いたのはあくまで定価です。実際の値段は購入前にご自身で必ず確認を。)
これ、圧倒的なコスパです。最強コスパです。ヤバイです。
ちなみに、9回分収録にしてこの値段を実現させたのは、コスパアピールの面もあると思いますが、「過去問重視」な赤本側の信念のようなものもひしひしと感じます。
「試験対策にはとにかく過去問。過去問を制したものが試験を制すのだああああ!!!」
みたいな、何十年にもわたり大学入試の過去問を出版してきた赤本の信念、揺るがない思想を感じるわけです。
英検対策には、大きく分けて
- 別の専用テキストを使って対策をした後に、試験直前になったら過去問を数回分だけ消化して本番に挑むパターン
- 過去問をひたすら解きながら、別のテキストもサブでこなしていくパターン
の2種類があると思います。
もしあなたが2の「過去問をたくさん解きたい」人でしたら、ぜひ赤本を選ぶのをおすすめします。
コンパクトで使いやすい
「9回分も入っているなら、かなり重たいんだろうな・・・」
と思った方がいるかもしれませんが、全くそんなことはなく、むしろコンパクトです。
本全体としては厚さにして約3センチほどはありそうな印象ですが、赤本の過去問は問題用紙だけ別冊になっており、かなり使いやすいです。
(別冊問題用紙は厚さ1cmほど。この中に9回分が詰まっているが、字が小さすぎるということもない。)
で、これはかなり細かい話になってしまうのですが、旺文社のものと比べても、この「別冊問題用紙」という配慮は、とても優秀だと言えます。
なぜかというと、旺文社の方は別冊"解答解説"だからです。
過去問は、何回も復習をしていくと、段々と解答解説は見なくなり、問題文のみを使って復習するようになると思います。
細かい違いですが、別冊として"切り離された側"が問題用紙の方が、使い勝手が良いです。"残された側"が問題用紙だと、別冊がはさまっていた隙間があってちょっと勉強しにくいです。
赤本は解説が丁寧!
赤本の過去問の解説は、他のどの過去問よりも丁寧だと感じます。さすが赤本・・・といったところですね。
単純に細かいところまでしっかりと説明がされていますし、他にも、たとえば長文問題の語注なんかも、赤本は数が多いです。
↓の写真は2017年の第2回筆記問題(3B)の長文の語注(旺文社)です。
内容はいいとして、語注の数に注目してください。これでもそこそこ多いとは思いますが、同じ問題の赤本の語注は↓です。
もう圧倒的に多いのがわかると思います。
上級者は旺文社の方がいいかも!?
ただ、解説が丁寧だからといって、学習者全員にとって赤本がおすすめ、というわけではありません。
解説が丁寧だということは、その分説明の量が増えるということです。
これがわずらわしいと感じる人もいるでしょう。
旺文社の過去問は、赤本よりも解説に多くのスペースを割いてはいませんが、これは別の角度から見ると
シンプルで読みやすい
と取ることもできますよね。
準1級などの難しめの級を受験される方は旺文社の方が合っているかもしれません。
訳に多少の違い
日本語訳ですが、訳出のクオリティに関しては旺文社、赤本どちらも文句のつけどころがありません。どちらも非常に優秀な訳です。
ただ、2社で訳の雰囲気が多少違います。
簡単に言うと、
- 赤本の訳出は真面目
- 旺文社はリアル感を重視している
という違いがあるなと感じました。
具体的に問題で見てみましょう。
2017年第2回試験大問1の(1)の日本語訳です。
赤本の訳は、
A:アフリカでの休暇を楽しめましたか?
B:はい。実に心躍るものでしたよ。
これに対し、旺文社の訳は、
A「アフリカでの休暇を楽しんだ?」
B「ええ。とてもわくわくしたわ。」
となっています。
どうでしょうか?言っていることは同じでも、両者の雰囲気はまるで違いますよね。
全体的に見ても、赤本は敬語での訳出が多く、カジュアルな会話もしっかりとした真面目な表現を用いています。
旺文社についてはその時その時のリアルな状況を重視した訳出になっていますね。
まあいずれにせよ、訳は全く間違えていませんし、訳の質も文句なしです。
個人的には状況をリアルに考えた訳出が好きなので旺文社の方に軍配があがるのですが、ここは本当に好みの問題なので、いま挙げた例を見て好きな方を選ぶのがいいですね。
注意:まだ出ていない級アリ!
すごくおすすめな赤本の英検過去問なんですが、2018年7/25現在、出ているのは
準1級、2級、準2級、3級のみ
です。
1級、4級、5級は出ていないので注意してください。
これも、おそらく大学入試を意識しているのでしょう。
1級は難しすぎるので、ここまで要求してくる大学はそもそもほとんどないでしょうし、逆に4級、5級は高校生にとっては簡単すぎてアピールポイントとしてはちょっと弱いんです。
ただ、全部の級が揃っていない、というのは赤本側としても痛いところなので、今後残りの級についても順次追加されていくのだと思います。
今後も動向を追っていくつもりです。
ちなみに、英検の各級の難易度については下記の記事で詳しく書いたのでぜひ合わせてお読みください。
⇒社会人は英検何級から受けるべき?大人の英語学習者におすすめの級を考えてみた。
以上、赤本から出た英検過去問のレビューでした。
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